吸収式冷温水器

吸収式冷温水器のしくみ

吸収式冷温水器と聞いて、どういうものなのか判る人は少ないでしょう。

「キューシュー式? 何それ、九州に工場があるの?」

「そうじゃなくて、ガスとか灯油を燃やして冷房をするんだよ。」

「え? なんだかマニアックなんだね。」

という具合で、マイナーなイメージの吸収式ですが、もう50年以上前から使われている技術でビル空調の世界ではメジャーな方式です。

事務所ビルや、病院などの空調用として使われているのでほとんどの人が間接的に吸収式冷温水器を利用しています。

ビル空調の方式としては

コンプレッサで、フロン等の気体を圧縮し、そのガスが膨張する際に温度が低下する原理によって冷房をする方式、ターボ式と言われます。家庭用エアコンもこの方式です。

吸収式は、水が蒸発する時に気化熱を奪って行きますが、この気化熱を利用して冷房をする方式です。

水は、大気中では100℃で沸騰しますが、圧力が下がって真空に近い状態になると、5℃ほどで沸騰します。

ですので、冷房用に使いたい冷却水が通ったパイプを真空中容器に入れて、そこへ水をたらしてやると、パイプ表面に落ちた水はパイプの熱を奪って蒸発するのでパイプの中の水が冷やされます。

この臭化リチウム溶液は水を吸ってだんだん薄くなり、水の吸収ができなくなりますので、別の部屋に送って熱を加えて煮立てることにより水を水蒸気として蒸発させます。この水蒸気は水に戻され再び、冷却コイルの冷却用の滴下水として利用されます。

吸収式冷温水器の仕組み

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メリット

1) ノンフロン空調

オゾンホールの破壊や温室効果の原因となるガスを使っていません。
(燃料を燃やしたときのCO2は出てしまいますが)

2) ヒートアイランドの抑制

夏にエアコンの前を通ると、ムワッと熱気が出ていますが、空冷式の室外機は空気で直接放熱するので高温の空気が直接放出されてしまいます。
吸収式だけではありませんが、大型の施設では冷房による廃熱の放出用に散水式の冷却塔を用います。
散水式の冷却塔は水の気化熱を利用して冷却するので、大気中に放出する空気の温度上昇が少ないという利点があります。

(参考:日本冷却塔工業会

3) 契約電力の削減

電気の代わりに、ガスや灯油を燃料として冷暖房を行うので、電力使用量を抑えられ、契約電力を下げることにより電気料金の節約になります。

4) 排熱・自然エネルギーが利用できる

吸収式は、熱源があれば作動するので、工場の俳熱や、自家発電設備の排熱(コージェネレーション)、バイオマス燃料といった様々な熱源を利用することが可能です。


・温水焚き=工場の温排水、太陽熱を利用
・蒸気焚き=工場の蒸気排熱
・排ガス焚き=ガスタービンの排熱

5) ボイラー技師が不要

吸収冷温水器は、内部が真空構造で、大気圧以下での運転を行うためボイラー管理士を置く必要がありません。

6) リサイクル

吸収式冷温水器を解体している様子をみると、鯨の解体を思い浮かべます。
真っ黒い鉄の外板をあけると中から銅の配管がごっそりと出てきます。 どちらも貴重な資源です。
また臭化リチウム溶液も高価な資源ですので、回収後再生処理されて再び臭化リチウム溶液として再利用されています。


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デメリット

1) 冷房・暖房の切替が簡単ではない

冷房切替え
冷却塔に水を張り、冷温水機を暖房モードから冷房モードに切り替えます。

暖房切替え
暖房運転では冷却塔を使わないので、凍結防止のため冷却塔の水を抜いておきます。
冷温水機を暖房モードに切り替えます。

※ユーザーが冷房と暖房を簡単に切り替えられる冷暖フリータイプや、冬季冷房が可能なタイプもあります。

2) 専門家によるメンテナンスが必要

吸収式冷温水機は、内部が0.87kPa(大気圧は101kPa)という高真空状態を維持する必要があります。

3) 個別空調向きではない

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